まずはすべての関係者にありがとう。まさか令和四年も暮れようという時にアイアンリーガーをテレビで観れる日が来ようとは思ってもみませんでした。テレビをほとんど観なくなって久しいですが、やっぱり「テレビ番組」として、皆が同じ時間に、決まった時間に画面の前に待機して、提供があって、アイキャッチの後にCMが入って……という一連の体験は、他の媒体では味わえない独特なものなんだなと改めて思いました。時間が決まってる配信もあるけど、それともやっぱり違う……その時にしか観れない、というのが大きいのかもしれません。ぜひ全国放映してください。全話。
それにしても、リマスター版、すごいですね……もちろん元のレトロ感ある映像もそれはそれで好きですが、か、解像度が……
放送前に冗談で「アムニキのメモリーもリマスターしてくれ」呟いていましたが、本当に結構リマスターしてくれましたね……高解像度シルバーフロンティアに僕の心はめちゃくちゃになりました。背番号1がくっきり見えて……そうだよな、不動のエース……ゴールドアームが見つめ、追いかけていた背中……あの時はひたすらに遠かった背中……
シルバーフロンティアがバイザーを上げるシーンはもう本当に勘弁してくださいという感じでした。いや分かってたけど……知ってるけど……いざ高解像度であの瞳を突きつけられてまともでいられる訳がないんです。その前にリマスターされたあの決意に満ちた美しく透き通る緑の瞳をお見せさせられているんです僕は。それと同じ瞳がバイザーの下から現れた時に正気を保つ術を僕は持ちません。展開を知っているかいないか、それは些末な問題です。備えなどしても無駄なことです。次の球が直球ストレートど真ん中だと分かっていたところで打てないものは打てないのです。
リマスター版について、他にはというと、オーナーがめちゃくちゃ美しくなっていて、もうそれだけでリマスター版の価値があるなと思いました。オーナーは華やかで色鮮やかなのが似合います。肌が綺麗。素敵です。画面が明るくなって細かいところに気づけるようにもなりましたね。オーナー、ブレスレット? 時計? してたんですね、知らなかった。素敵です。
あとはオープニングのギロチさまもちゃんと美しくなったというか血色が良くなっててちょっと面白かったのと、フットくんのハイパーボムシュートのエフェクトがとてもキラキラになってて、なんか魔法少女の技みたいで嬉しくなってしまいました。ファイター兄弟の技とかも期待してしまいますね。あとライトニングクラッシュバーニングダイヤモンド。
マグナムはかっこいいし、マスクくんは高解像度でさらにイケメンになってたし、マグナムはかっこいいし、最後の一枚絵はてぇてぇここに極十郎太だし、マグナムはかっこいいし、本当になんてことしてくれたんですかリマスター。サンフェスのグッズもめっちゃ多いしゲスト超豪華だしBlu-ray特典の描き下ろしも殺意高すぎだし三十周年ってすごい。
以下ただの二十二話語り
かつてゴールドアームに「お前にはまだ分からないだろう」と言ったシルバーフロンティアーーマグナムエースが、二十二話では「まだ分からないか!」と言うんですね。今のお前なら分かるはずだと。そして「アイアンリーガーを磨くのはアイアンリーガーだ」という、あの時預けたその言葉を、長い長い時を経てゴールドアームが返すーーその時のマグナムの心境たるや、もう僕の想像の及ぶ範囲を超えているのですが、しかしマグナムはそれに微笑みだけで応えるんですね……こちらの腕をむんずと掴んでぐいぐい引っ張っていくくせに、こういうところではぱっと手を離す。本当に人が悪い。マグナムもですがスタッフが。
「お前は何者だ」というゴールドアームの問いに、「俺はマグナムエース、お前が見た通りのアイアンリーガーだ」と答えるマグナム。そして「あいつは(中略)シルバーフロンティアだ」と気づいたアームは、しかし最後はやはり「マグナムエース」と呼びかけ、「(シルバーフロンティアであった)お前の言っていたことが分かったような気がする」と、かつて預かった言葉を「マグナムエース」に返す。
ゴールドアームの見た通りのアイアンリーガーとは、かつてシルバーフロンティアであり、そして今この場所に立っている、かつてと同じ瞳をした「マグナムエース」なのだと。過去も、過去から地続きであるこの今も、それに至るまでの道程も、すべて受け止めて、その上で、今この時の、目の前の、「マグナムエース」という一人のアイアンリーガーに向き合う。「アイアンリーガーとは何か」の一つの答えが、この二十二話のゴールドアームにあるような気がします。
しかしこの一連の流れ、無駄が……ない……本来一話で終わらせるような話じゃないと思うんですが、脚本に隙がなさすぎて引き伸ばしたらかえって魅力が損なわれる気もする……アイアンリーガー/Zero観たいんですけどね……いややってくれるなら万歳三唱しますけどね……
しかし、ゴールドアームの「じゃあな」、あんなに小さい声だったんですね……それまでずっと野獣みたいな声を張り上げていたのにそんな声も出すんかこのロボットは。さすがエースピッチャー緩急がヤバい。いや投球に緩急使うタイプには見えないけど。
「お前の見た通りのアイアンリーガーだ」の「アイアンリーガーだ」、この言い方がめちゃくちゃ……めちゃくちゃぐっとくる……「〜見た通りの」までと少し声の調子が違う。もちろんゴールドアームに語りかけているけど、自分自身への宣言、誓い、あるいは願い、祈りのようにも聞こえる。「俺はアイアンリーガーだ」と……
「お前の見た通りの」と言うのは、自らの在り様が「アイアンリーガーとは何か」の答えであろうとする決意。それはルーキーのアムニキに向き合った時と変わらない姿勢だけど、強制引退を経て、ソルジャーとしての過去を背負って、それでも再び戻ってきたマグナムエースが言う重みは凄まじいですね……
これは完全に妄想ですが、マグナムが一番「アイアンリーガーとは何か」を伝えたかったのは、やっぱりゴールドアームだったんじゃないかと思いました。果たせなかった約束、見届けられなかった成長。それを、アイアンリーグに残り続けて、可能性を繋いでくれたゴールドアーム。すべてを失って、けれどもすべて失われたわけではなかった。繋いでいく。繋がれていく。これまでも、きっとこの先も。限りなく。
そんな二人に「勝負だ! マグナムエース!」「受けて立とう! ゴールドアーム!」をされて、おかしくなるなという方が無理な相談だが!?
最後「アイアンリーグに正義の心を取り戻すためだ」と言ったマグナムに、「心か……」と呟くゴールドアーム。ここでゴールドアームが詠嘆とともに繰り返す言葉に「心」を選ぶのが、アイアンリーガーだなぁ、と思います。
もう本当に、やばいです二十二話。何度見てもやばい。リマスターされてさらにやばい。見ると疲れる。